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2025/09/22 13:56
ボルドー・シャルトロン地区に創業された家族経営のワイン商、マーラー・ベッセ社。
今回、同社のジェネラルマネージャーであるニコライ氏が来日、日本のワインラヴァーに向けてメッセージをいただくことができました。
アートクリエイティブビジネスサポートにとっても重要なビジネスパートナーである、マーラー・ベッセ社の魅力にインタビューで迫ります。

マーラー・ベッセ社について
今回、インタビューに答えてくれたのはマーラー・ベッセ社のジェネラルマネージャーであるニコライ・ヒーゼゴー氏。
来日中のニコライ氏に、マーラー・ベッセ社についてお聞きしました。

ニコライ「日本の皆さま、こんにちは。マーラー・ベッセ社のニコライと申します。マーラー・ベッセ社は、1892年にマーラー・ベッセ家によって設立された家族経営のワイン商で、社名は創業者である、“フレデリック・マーラー”に由来しています。私たちはボルドーを中心とした上質なワインを取り扱うワイン専門商であり、現在60か国以上にワインを輸出しています。さらにスピリッツの取り扱いを、ボルドーでシャトーも自社所有しています。ワイン生産者、栽培者としての経験をふくめ、最後のネゴシアンとしての誇りを持って皆さまに素晴らしいワインを届けていきたいと考えています。」
マーラー・ベッセ社は、ビジネス全体のうち約70%が輸出、残り30%がフランス国内向けの販売。
今回、直接自社の取り扱うワインを紹介できることを大変嬉しく思っているとお話しいただきました。
マーラー・ベッセ社が所有するシャトーについて
マーラー・ベッセ社はボルドーでシャトーを自社所有しています。
ニコライ氏に、現在マーラーベッセ社が所有している代表的なシャトー、ポートフォリオの中で特に選定されているシャトーついてお聞きしました。
ニコライ「マーラーベッセ社が創業したのは、1892年。ただ、初めてシャトーを自社所有したのは第二次世界大戦直前のことです。当時のマーラーベッセ家は他社のワインを扱っていたものの、自らその品質を管理できる状況ありませんでした。そこで同家が考えた答えが、“ボルドーの右岸にも左岸にも足場を築くこと”だったのです。」
第二次世界大戦前の経済危機の最中、ワインの生産と流通の両方を自らの手で管理したいと考えたマーラー・ベッセ家。
ほかの生産者に依存しない体制を築きあげるべく、自立した体制を築こうとしたとのことです。

ニコライ「マーラーベッセ家が1930年代にまず購入したのが、シャトー・パルメ。これは、ジロンド県の中央部であるメドック地区でのパートナーシップを通じたものでした。その後に右岸川の拠点として、『シャトー・シュヴァル・ノワール』を取得します。このように、マーラーベッセ家はボルドーの右岸と左岸において、素晴らしい品質のワインを適正価格で、なおかつ安定的に確保できる体制を築くことに成功したのです。」
左岸、右岸、この両岸に足場を持つこと。
これが、マーラー・ベッセ社の戦略的な鍵となっていったのだそうです。
ニコライ「戦後、マーラーベッセ家はサン・テステフ地区にあるクリュ・ブルジョワ格付の『シャトー・ピカール』を取得します。北部に位置する点、ブドウ品種の85%がカベルネ・ソーヴィニヨンで構成されているなど、ほかのシャトーとは違うユニークな特徴を持つシャトーです。また、ムートン・ロートシルトやラフィット・ロートシルトといったポイヤックの名門シャトーに隣接する区画に位置しているところも特徴でしょう。さらに、同地区にグラン・クリュ格付のシャトー『シャトー・ラ・クーロンヌ』も所有。最終的には、右岸にある優れたコストパフォーマンスを誇る『アルファ・ラ・ベルナール』も取得しています。」
また、マーラー・ベッセ社ではマルゴー地区のラリオやTR4、シャトー・ブーケなど、所有していないものの長年にわたりパートナーシップを築いているシャトーなどを持ちます。
ニコライ「また重要なパートナーとして、ポムロールの『フォーティエール・グラーヴ』。グラーヴ地区には優れた白ワイン・赤ワインを生み出す『シャトーオーレス』があるなど、こちらも私たちの主要なポートフォリオの一角を担っています。」
マーラー・ベッセ社のワインポートフォリオの特徴は、ボルドー全域をしっかりとカバーしていること。
そして、地域の多様性と品質の両立を実現しているところにあるとニコライ氏は語ってくれました。
ボルドー以外のワインについて
マーラー・ベッセ社では、ボルドー以外に世界各地のワインを取り扱っています。
どのようなワインをストックしているのか、ニコライ氏にお聞きしました。
ニコライ「世界中のコレクターやインポーターへ優れたワインを販売することが、私たちの主要な市場です。今ら15年から20年ほど前のことですが、私たちのお客さまがボルドー以外のワインに関心を持ち始めました。ファインワインビジネスの世界的中心であるボルドーだからこそ、カリフォルニア、イタリアといったボルドー以外の優れたワイン産地のワインが、ここボルドーで求められたことは自然な流れだと考えています。そして、ファインワインを生産する世界の生産者たちにとっても、私たちのようなグローバルな流通ネットワークを持つ企業は魅力的でした。なんせ、私たちは世界中の市場に直接、ワインを届けてきたのですから。」
この流れの中で、世界中のファインワインがボルドーへと集まり、コレクターもボルドーへやってくる。
マーラー・ベッセ社は、その流れに乗るようにオーパス・ワン、マッセート、ソライアといったファインワインをポートフォリオへと加えていったのだそうです。

ニコライ「例えば、お客さまがボルドーワインが欲しいといった際、オーパス・ワンなどのカリフォルニア、ナパ・ヴァレーのワインを一緒に追加できます。物流の手間、そして品質管理もとてもシンプルです。この流れは、ごく自然な成り行きだったと考えています。」
スピリッツ(蒸留酒)について
マーラー・ベッセ社では、ワインだけでなくスピリッツ分野にも注力しているところが特徴です。
スピリッツとマーラー・ベッセ社についてお聞きしました。
ニコライ「スピリッツについて、私たちは50年にわたり取り組んできました。2025年はちょうど、『グレンファークラス』との取引開始から50周年という記念すべき節目で、9月にパリで記念イベントを開催する予定です。私たちがスピリッツを取り扱い出した当時、スピリッツ事業はパリを中心としたフランス国内の主要都市にあるレストランやワインショップとの関係構築における突破口となり得ました。これら販売店にとってスピリッツのニーズがあったものの、彼らは世界中からウイスキーやジンなどをどのように調達すれば良いかわからなかったのです。」
現在でも、スピリッツを本格的に取り扱うネゴシアンはマーラー・ベッセ社だけかもしれないと、ニコライ氏。
ニコライ「あまり表立って語られていることではないのですが、スピリッツはそれだけ重要な付加価値になっていると感じています。手間のかかる分野であり苦労を伴いますが、私たちの大きな成功につながったことは事実です。現在、スピリッツは全体の売上高の15から20%を占めるほどにまで成長している分野となっています。」
また、マーラー・ベッセ社では、近年スコットランドの新進気鋭のウイスキープロデューサーを取り扱い始めたそうです。
新たな生産者について、ニコライ氏にお聞きました。

ニコライ「おお、『チャプター7』ですね。彼らとはここ3、4年パートナーシップを築いています。当初は実験的な取り組みとしてスタートしたものですが、今では私たちのポートフォリオに欠かせない存在です。それは、なぜなのか。私たち自身、スコットランドや世界各地に足を運び、単一の樽を選定するリソースを持ち合わせていません。そんな中、私たちは『チャプター7』の若いチームと出会いました。彼らは、スコットランドだけでなく世界中の主要な蒸溜所とのネットワークを有しており、各地で特別な樽を探し出し、私たちのためにボトリングしてくれているのです。」
『チャプター7』がボトリングする製品には、蒸溜所の情報、生産量、アルコール度数などが明記されており、透明性もしっかりと確保されているのだそう。
ニコライ「このかたちのおかげで、私たちは3から5か月ごとに新しい、“逸品”を次々に展開することに成功しています。常に動きのあるスモールポートフォリオではありますが、お客さまだけでなく、私たちにとっても非常に刺激的で楽しい試みとなっています。」
マーラー・ベッセ社の考える日本市場について

次に、マーラー・ベッセ社における日本市場の可能性についてニコライ氏にお聞きしました。
ニコライ「日本のワイン市場は、私たちにとって大変重要なマーケットです。私たち、“品質”に妥協なくこだわるメゾンであり、クオリティを重視しているネゴシアンでもあります。そして、日本のお客さまも、“品質”をとても大切にされています。日本は、大量消費の市場ではなく、間違いなくクオリティ重視の市場です。日本のお客さまは繊細な感性を持っており、上質さとフィネス、エレガンスといった要素に価値を見出し、さらにそれが完璧であることを求めています。マーラー・ベッセ社も、その日本市場の姿勢に深く共感しているのです。だからこそ、私たちは量ではなく、“質”にフォーカスしたアプローチで取り組んでいます。」
日本のワイン&ウイスキー愛好家へメッセージ
ニコライ氏より日本のワイン&ウイスキー愛好家へのメッセージをいただきました。

ニコライ「親愛なる日本の友人の皆さま、パートナーの皆さま、そしてワインやウイスキーを愛するすべての皆さま。長きにわたり、マーラー・ベッセ社の活動を通じて温かいご支援をいただき、本当にありがとうございます。私たちが取り扱う商品において、有名な銘柄だけでなく、あまり知られていないものにもきっと魅力を感じていただけるはずです。いつか、ボルドーでお会いできる日を楽しみにしています。その時は、ぜひ私たちのセラーをご案内させてください。また、私たちが携わっているシャトーの1つにご一緒するのも素敵ですね。これからも、私たちのワインをどうぞお楽しみください。」
メドック格付け3級のシャトー・パルメをはじめとするグラン・クリュを所有するだけでなく、時代に合わせて世界中のファインワインやスピリッツを取り扱い成功を収めてきた、マーラー・ベッセ社。
質を重視する姿勢を守り続けているからこそ、世界中で信頼されるワイン商へと成長を遂げたのだとインタビューを通じて痛感しました。
偉大なワイン、そしてスピリッツに出会いたい。
そんな時は、ぜひマーラー・ベッセ社のポートフォリオから選んでみてはいかがでしょうか。